代替屋

「続・代替屋」展示&飲食体験パフォーマンス Part 1

渋谷の生態系と歴史・文化から「食」を考える

アーティストの柴田祐輔さんとToken Art Centerが昨年秋から約5ヶ月間、リサーチを続けてきたアートプロジェクト「続・代替屋」が2月下旬、ついにその全貌を現しました。東京・渋谷の都市型生態系をフィールドに、食にまつわる歴史と文化について考察を重ねた柴田さんが、その成果をインスタレーションとして展示。会期中、自らがシェフとして料理を振る舞う飲食体験パフォーマンスに挑みました。コース形式のパフォーマンスでは、「渋谷特産」の雑草などを食材とした料理が独特のネーミングとともにサーブされました。未知の料理への期待と不安を抱きつつ、テーブルに着いた参加者が体験したのは――。

視覚・聴覚・味覚を動員するインスタレーション

「続・代替屋」展(2月21日〜3月9日)の会場は、渋谷区千駄ヶ谷のスペース「Salon de Zuppa」。昭和の東京オリンピックが開催された1964年ごろに建てられた、外苑西通り(キラー通り)沿いのビルの5階にあります。窓の向こうには令和の東京オリンピックの主会場となった新・国立競技場がそびえる、という立地です。

会場には、ディナーテーブルを挟んでデジタルサイネージ2基が設置されています。画面には、渋谷の街に輝くサイネージの風景と限界集落の耕作放棄地、そして固定種、在来種の種子の映像がループで流れています。

デジタルサイネージの足元をはじめ、会場のあちこちに百個以上のプランターがあります。1月のワークショップで、渋谷の街を歩いて採取した雑草を植え付けたものです。これらのプランターは植え付け後、映画館など渋谷の文化施設の屋上などに置かれていました。日中は太陽光、夜はデジタルサイネージなどの人工光を浴びて育った雑草が、「渋谷特産野菜」としてパフォーマンスの食材になります。

会場には常に、女性の声がひそやかに響いています。「Salon de Zuppa」の住人・渋谷早苗が囁いている、という設定です。囁きはどれも断片的で、脈絡はうかがえませんが、その内容は会場で配布される冊子で判明します。リサーチの参考にした多数の書籍(その一部が会場のテーブルに置かれています)、そして研究者や農家の人々との対話から選んだ、印象深い言葉の数々をコラージュしたものです。

観客には「渋谷センター外のスープ」という謎めいた飲み物が提供されます。材料について「フタホシコオロギ、雑草、生ゴミ」という掲示があるため、引いてしまう観客が少なくありません。

でも、ご心配なく。コオロギは食用に養殖されたもの、雑草は雑草料理研究家の畑で育てられたもの、「生ゴミ」は、柴田さんの悪戯心によるネーミングで、実際は固定種、在来種を栽培する農園から入手したクズ野菜などです。

雑草の根のように絡み合う「続・代替屋」のコンセプト

「続・代替屋」はこのように、視覚と聴覚、味覚をとおして鑑賞する展示なのですが、コンセプトの把握は必ずしも容易ではありません。それを補うのが、テーブルに置かれた“ランチョンマット”です。多数の言葉が補助線で縦横に結ばれた、一種のダイアグラムです。

最下段中央の代替肉がこのプロジェクトの出発点です(以下、太字はダイアグラム内の言葉です)。すでに身近な代替肉としては大豆ミートなどの植物性肉があります。動物の細胞や血清などを素材とする培養肉も研究されています。歴史を遡れば、精進料理の「がんもどき」のようなもどき料理にたどり着きます。

渋谷の生態系を探るリサーチとして、昆虫食雑草栽培のワークショップを実施してきました。雑草は野菜の原種であるという認識のもと、リサーチは品種改良F1品種に向かい、その先には遺伝子組換え作物が現れてきました。

 渋谷の文化、歴史は実に多彩です。1964年東京五輪の主会場はかつての国立競技場であり、そのころに渋谷川暗渠化が進められました。「ギャルの聖地」109がある場所には戦後、ヤミ市が生まれ、焼鳥屋台が繁盛。代々木公園は当時、ワシントンハイツと呼ばれ、米軍住宅が立ち並ぶエリアでした。そこからアメリカのポップカルチャーが滲み出していく――。そんな風景が浮かび上がります。

こうした多種多様なことば(=事象、概念)が、まるで雑草の根のように縺れ絡まり合って「続・代替屋」の世界を織りなしています。それをさらに深く体感できる機会が、会期中の2月28日〜3月2日に、5回行われた飲食体験パフォーマンスです。

(編集:西岡一正、写真:1, 4, 5, 7, 8, 9, 15, 17, 22枚目は阪中隆文、左記以外は柴田祐輔)

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