先日下水が流れる旧渋谷川の上を歩いて考えるのは排泄物の行方について。
渋谷区内の下水は芝浦水再生センターという下水処理場に流れ着いて、活性汚泥法という方法で分解し、汚泥と水に分離され、汚泥はさらに脱水焼却され埋め立て、水は消毒され川へと放流されているようだ。つまり人間の排泄物は最終的に焼却灰になってしまうことで、排泄物に含まれていた菌類は死滅して無菌化され、自然に還ることはないということだろう。
ところで生き物は、動物、植物、菌類と大きく3つに分けられる。
上記の排泄物は自然界であれば、動物の排泄物は菌類の養分となり菌類はそれらをもとに二酸化炭素とリン・カリウムなどの無機物を排泄、それらを植物がまた摂取し、酸素を排泄する。つまり排泄物を与えながら命が繋がれていくということだ。
一方で人間の排泄物は前述の通り焼却、埋め立てされることで自然のサイクルからは断絶されてしまっている。
そこで人間が自然のサイクルの中にもう一度入り込むための方法、そして自然と共生する方法として「野糞」を提案するのが、50年間トイレを使わず野糞をし続けている糞土師・伊沢正名さん。
伊沢さんの著書「ウンコロジー入門」によると、人糞を田畑に撒いて肥料にすることは日本では古来より行われてきたそう。それが近代になって化学肥料が登場したことにより姿を消していったということだ。
「うんこはごちそう」。排泄物をそう捉える時、現代ではゴミとみなされているものが大きな価値のあるものに見えてこないだろうか。
参考文献:伊沢正名「ウンコロジー入門」偕成社、2019年
高度に都市化された渋谷周辺を舞台に食材や調理法を代替して作る「代替」料理を創作、実食可能な体験型パフォーマンス作品へ