新陳代謝の激しい渋谷にあって、老舗飲食店はと調べてみると、道玄坂や円山町のあたりに比較的多く存在していることがわかった。この辺りはラブホテルや風俗、飲食店が混在する歓楽街。歩いていると台湾料理の「麗郷」、中華麺店「喜楽」が目についた。いずれも創業から70年を誇る渋谷の中では最古参の飲食店の一つで、いずれも台湾出身の方が初代らしい。
歴史を遡ると、道玄坂の三角地帯には戦後ヤミ市があって、日本の旧植民地であった台湾の方々が少なくない勢力を持っており、「台湾マーケット」なるものが展開されていたらしい。ヤミ市は、1951年に閉鎖され、両店はその直後に創業されているから、やはり「台湾マーケット」との関連はあるのだろうか。
ところで、現在の代々木公園の場所には、戦後には「ワシントンハイツ」という在日米軍施設があり、渋谷のヤミ市の特徴として「米軍施設の近接による商品構成の特異性」があったという。アメリカの影響下にあった渋谷ヤミ市の中に旧植民地の台湾マーケットが存在する入れ子の構造が見えてくるようだった。
参考文献:橋本健二、初田香成 編「盛り場はヤミ市から生まれた」青弓社、2013年
高度に都市化された渋谷周辺を舞台に食材や調理法を代替して作る「代替」料理を創作、実食可能な体験型パフォーマンス作品へ