リサーチに同行していただき、渋谷昆虫採取採取ワークショップ「City Bug」にゲスト講師としてご参加いただいた内山昭一さんは著書「昆虫食入門」の中で、現代の日本において昆虫が食べられていない理由を歴史を参照しながら説明している。
まず驚かされるのは、内山先生の調査によると日本では古来からアジア諸国と同じように昆虫が食べられていたということだ。それが途絶えてしまったのは明治期。それ以前はそもそも「害虫を駆除する」という概念がなかった日本において明治以降に近代化、西洋の衛生思想の流入に伴って状況が一変。政府は害虫の防除を行わせる体制をとりはじめた。それによって清潔で美しい都市の形成が目指され、身近な環境からカやハエは急激に減り、そして「排除すべき虫」としての「衛生害虫」という概念だけが残されたことで昆虫食は衰退していったのではないかと考察する。
つまり、今日本で昆虫を食べることは、日本人であることや近代化とはなんだったかということと向かい合うことでもあると言えるのではないだろうか。
参考文献:内山昭一「昆虫食入門」平凡社、2012年
高度に都市化された渋谷周辺を舞台に食材や調理法を代替して作る「代替」料理を創作、実食可能な体験型パフォーマンス作品へ