代替屋

⑧代替肉の系譜

植物性肉、培養肉ともに日々進化をとげている代替肉の起源はどこにあるのか。

日本での培養肉研究を牽引されている竹内昌治さんの著書「培養肉とは何か?」を参照すると、「代替肉といっても、まったく新しいコンセプトではなく、歴史を振り返れば、肉もどきは日本人になじみ深い。鎌倉時代に禅宗の広がりとともに精進料理が発展、大豆やこんにゃくを使って作る肉もどきが広がってきた。」とある。つまり、仏教の精進料理の肉もどきや肉に似せる技術が現代の代替肉の技術の進化に繋がっていると考えることができる。

培養肉とは何か?

さらに、肉もどきは仏教の不殺生戒から生まれているから、仏教の伝来を遡っていくと中国にもどき料理の起源があるらしいことがわかってくる。ただし、ここで疑問に思うのが仏教の起源はインドであるのにインドではもどき料理は生まれず、その後仏教が伝来した中国でもどき料理が生まれたということだ。このことについて、ジャーナリストの森枝卓士さんは著書「アジア菜食紀行」の中で以下のように推測する。

アジア菜食紀行

「その差は何なのか。考えられることの一つは、生まれてから死ぬまで一度も肉や魚を口にすることはない、というほぼあり得ない環境での菜食主義であるということ。肉の味を知ってしまった人々が、基本として肉料理の応用として、菜食の料理を生みだし育てたのではないか。」

仏教が伝わる以前から肉食が生活に定着していた中国と違い、インドでは仏教以前からヒンドゥー教やジャイナ教などより厳格な肉食、魚食の禁止が既にあり、一生のうちに一度も肉を食べないという環境があった。中国ではつまり、一度肉を食べてしまった人間がその未練として、肉もどきを作ったのではないかということだろうか。もちろん他の説もあるだろうが、一説としてとても興味深く、「続・代替屋」において代替食を考える上で参考になるように思う。

参考文献:竹内昌治、日比野愛子「培養肉とは何か?」岩波書店、2022年、森枝卓士「アジア菜食紀行」講談社、1998年

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高度に都市化された渋谷周辺を舞台に食材や調理法を代替して作る「代替」料理を創作、実食可能な体験型パフォーマンス作品へ

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